2022年9月– date –

私の旦那という事を知って、懐いたのか、それともフリなのか。とにかく今わかっていることは、こんなにたくさん仕事のある東京で、私の働いている会社に入社した。距離は近づいてしまって、身近な人間関係に足を踏み入れられただけでなく、何も知らない旦...

「そんな…」「知り合い？」「ううん。知らないけど。ちょっと知ってる人に似てたから」そこに写っていたのは、元旦那のカズヤだった。まさかとは思うが、こんな偶然は奇跡に近い。探し当てられたと考えるのが妥当だろう。動揺を隠すようにご飯を食べようと...

「…え？あ、そうなんだ」おかしい。だってあの時急いで帰ったのは旦那さんが帰ってくるからだったはず。もしかしたら急に予定が変わったのかもしれない。でも何かが引っかかる。それはまるで、あの時のモヤモヤに似た何かで…。そして次の瞬間、私は思考が...

旦那さんが帰ってくるなら仕方がないよねと陽を抱えて私も晩御飯の支度をするために家路につく。まさか、この時感じた違和感が後々に大きな出来事に繋がるとも知らずに。帰って育児に家事に奮闘していると、いつの間にか日が暮れていて旦那が帰ってきた。...

旦那さんが社長をしている彼女。働くのが好きで、これからも働きたいという意思が強かったが、出産を機にその考えは変わったようだ。心なしか、少し雰囲気も変わった。前は柔らかい雰囲気の女の子っていう感じだったが、今は妊娠前よりも見た目に気を使っ...

育児でなかなか外との関りを持てない私の為に、仕事終わりに直帰してくれて楽しませようとしてくれている旦那様。あゝ、この人と結婚出来て良かった。と改めて毎日感じるのは、陽の存在もあるからだろう。今ある幸せを嚙みしめて、これからはもっと前向き...

「お帰り。沢山貰って来たんだね」「ただいま。みんなくるみの体大丈夫かって心配してたぞ。産後でしんどくないかって」旦那とは社内恋愛だ。だから、会社の人たちとはお互いに同僚という事になる。「みんな元気そうだった？陽ももう少し大きくなったら、...

「何か悩み事でもあるの？ここ数日よく話しかけても心ここに在らずって感じだったから」「ちょっと考え事。これからの陽のこととかさ」「そうか。一人であまり考えすぎるなよ？」「うん。ありがとう」いけない。顔と態度に不安が出てしまっていた。どこま...

迷惑を掛けたくないし、何より心配を掛けて負担になってしまうのが嫌だったから。大丈夫、大丈夫。東京は人が大勢いるんだから、きっとすれ違ったとしても気が付かれないはず。それに、見つかったからって何かされると決まったわけじゃない。もしかしたら...

「お世話になりました」「またいつでも来てください」そして、東京に帰る日。父と旦那はすっかり仲良くなり、名残惜しそうに話をしている。「くるみ、本当に気をつけてね」「大丈夫だよ。心配しないで」母はそれでも心配そうに見送る。陽を最後に抱っこし...