母が夫の子を妊娠しました:番外編:第4話





「…俺と、付き合ってほしい」



ケーキに感動していると、次に出されたのは小さな箱と告白。

真剣な表情の彼に胸がトキメク。



でも、私は…



「返事は今じゃなくてもいいから」



何も答えることが出来ない私に、困ったように笑う彼。

あゝ、そんな顔をさせたいんじゃないのに。

いつまでも過去に捕らわれている自分が憎い。



前を向くって決めたじゃないか。

たとえ嫌われたとしても、誠意には答えなければいけない。

悲しませてはいけない。



私は今、彼と向き合いたい。

勇気を出して、伝えよう。



「私も好き。だから、凄く嬉しい。でも、秘密にしていることがあるの」



心臓が飛び出そうだった。

私の言葉に、嬉しそうな表情を浮かべて、次の言葉をゆっくりと待ってくれる彼。



「バツイチなんだ。詳しくは説明できないんだけど、不倫されて離婚した。」

「子どもは居ない。家族の話が出来なかったのも、私には生まれたばかりの妹が居て、複雑な家庭環境だから、言えなかった。」

「それでも前を向こうって思って、地元から出て東京に来たの。こんな私じゃ、あなたには不釣り合いだよ」



真っ直ぐに気持ちをぶつけてくれる彼に、私は不釣り合いだ。

それは最初から感じていたことだし、嘘ではない。

それでも、この話をしたことで離れて行ってしまうのではないかと一秒一秒が長く恐怖だ。



「関係ないよ。くるみは辛い経験をした。だから、幸せになる権利がある。」

「俺は、過去に結婚していた事実があったとしても、嫌いになんてならない。絶対に」



しかし、強いまなざしではっきりとそう言ってくれた彼。

びっくりしてしまうが、



「だから、俺と付き合ってください」



何度もそう告白してくれる彼なら信じれると確信して、



「私で良いの?」

「くるみが良いの」

「…っ、よろしくお願いします」



受け入れることが出来たのであった。



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