母が夫の子を妊娠しました:番外編:第3話





それから彼とは何度かご飯に行く機会があり、仕事でミスをした日にはやけ酒にも付き合ってくれた。

徐々に惹かれていくのが分かるし、彼の寄せてくれている好意にも気が付いていた。

それでも恋愛に一歩踏み出せないのは、元旦那とのことがあったからだと思う。



「くるみ、週末空けといて」



いつの間にかお互いを下の名前で呼び合うようになっていた私たち。

いつものように定食屋さんに行った帰りに、週末デートに誘われた。

もちろん”はい”と答えたが、同時に週末が怖くなる。



もし好意を告げられたら、私はなんて答えたらいいのだろうかと。

彼のことは好きだが、裏切られる恐怖に勝てるのだろうかと。



そして迎えた週末。

映画を見て、ショッピングをして、夜は彼の提案で再びあの定食屋さんへ。

毎回必ず頼む肉じゃがと茶碗蒸し。



「大好きだね、くるみはその組み合わせ」

「これがないと仕事頑張れないくらい好き」



もう付き合っていてもおかしくない、私たちの距離。

砕けたように笑う彼は、心を完全に開いてくれているようで、家族の話や昔話といった自分の話を沢山してくれる。



対して私は、家族の話も過去の話も出来ないでいる。

こんな状況に自己嫌悪に陥ってしまい暗い表情になってしまうと、目の前に出されたケーキ。



「…え?なんでケーキ?」



店主さんが彼からだと言って去っていく。



「誕生日だろ?今日はくるみの」



そして思い出した。

今日が私の誕生日だという事を。

すっかり忘れていたのに、彼は覚えていてくれていた。





「…俺と、付き合ってほしい」



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